(ブッシュ)ロシアの南オセチア・アブハジアでの権益を承認。西欧とも協調して何とか「手打ち」を模索。
(マケイン)グルジア防衛の大義からロシアとの冷戦も辞さず。場合によってはグルジアのサーカシュビリ政権による南オセチアとアブハジアの「回収」を支持する可能性も。
(オバマ)西欧の穏健論に協調して当面の事態は静観するが、(仮にブレジンスキー委員会の提言を採用するとして)中長期的には北コーカサスにも「手を突っ込んで」高度の「人権外交」へ。緊張が高まればコソボ様にNATOの枠組みを押し出すことも。
ただ、注意しておかねばならないのは、現時点ではマケインとオバマは「候補」に過ぎません。あくまで選挙目当て、つまり自分の「将来の政権担当能力を誇示する」ために色々なことを言っているだけで、当選したら本当にその政策を実行するかは分からないのです。ただ、選挙の対立エネルギーというものは、こうした軍外交の問題に関しては強硬論をどんどん増幅させる効果があるということは言えます。ですから、当面はマケインが強硬論を言い、オバマも似たようなことを言い、ブッシュがそれに引きずられるという流れが続く可能性も否定できません。
更に言えば、この間のアメリカの「戦争」はイラクにしてもアフガンにしても全く出口が見えなくなっています。そこで、何もかもをロシアのせいにして、この二つの戦争を棚上げにしてロシアとの本格的な冷戦に入った方が「何となくスッキリする」という気分がアメリカの中には生まれてくる可能性があります。仮にそうだとすると、雪だるま式に対立エネルギーが膨らんでいくことも十分に考えられるのです。今回の一件を契機として、ロシアのWTOやG8からの追放というようなことが、既に言われ始めていますが、名誉の問題に敏感なロシアに対しては、そうした脅しが軟化を促すような効果は期待薄でしょう。状況はクリティカルな局面を迎えています。
ですが、どう考えてもアメリカとロシアが冷戦に入るとなると、その影響は大きすぎます。例えばロシアがアメリカ陣営への「妨害」をしようと思えば、色々なことが可能です。悪い方へ、悪い方へと考えればキリがありません。
(1)グルジアに関してはロシアは「いつでもゴリから首都トリビシをうかがう」圧力を維持。これに対して「人道支援のアメリカ軍」が対峙する形が続く。
(2)アフガン戦線に関しては、タジキスタンから米軍基地を追い出し、旧北部同盟にジワジワ勢力を伸ばしてカルザイ政権を弱体化させる。同時に疲弊したNATO派遣軍が駐留を継続できないように追い込む。
(3)北朝鮮問題に関しては、六カ国協議の枠組みを飛び出して、金正日政権に直接資金提供をしてこの地域の攪乱を図る。
(4)モルドバを更に親ロ化してウクライナを挟撃する形を取る。
それだけではなく、キューバとアメリカの接近を阻止したり、アラスカや千島などを舞台にMDを置く置かないのケンカになったり、いずれにしても、ここ20年の世界的な平和の努力はかなりの部分が総見直しになってしまいます。そうなれば、日本への影響は甚大なことになります。北方領土問題が凍結されるのは当然として、アフガン情勢やEUの結束、北朝鮮の周辺情勢が一変するということにでもなれば、軍事外交の戦略を全面的に見直さなくてはならないからです。BTCパイプライン一つとっても、13日の時点で送油が再開されたという報道もありますが、その安全が長期的に見て脅かされるようですと、原油価格への影響など日本への影響は大きなものがあるでしょう。少なくとも「ギョーザ」を話題に与野党で、あるいは日中で綱引きをしているような時期ではありません。
アメリカ人は戦争がお好き?原油がらみだといつもでしゃばるね。
財政悪化バンザイ。
2008年8月21日木曜日
登録:
投稿 (Atom)