【ワシントン】ガイトナー米財務長官は16日、上院農業委員長に宛てた書簡の中で、デリバティブの規制強化は抜本的な金融改革の「中核」であるものの、一部の民主党議員が提唱していた銀行による取引の禁止については言及しなかった。
Bloomberg News
ガイトナー米財務長官
ガイトナー長官は、上院農業委員会のブランシュ・リンカーン委員長(民主、アーカンソー州)に宛てた書簡の中で、新たな金融規制によって店頭販売(OTC)デリバティブの取引方法を規制することは金融危機の元凶となった事態の再発を防ぐために必要であるとしたが、大手銀行によるデリバティブ取引事業のスピンオフを義務付けるリンカーン委員長の提案を支持するには至らなかった。
金融機関はデリバティブ規制阻止に向けてロビー活動を行っている。2ページにわたる今回のガイトナー書簡は、規制強化に向けたオバマ政権の方針を改めて示すことで、業界の動きをけん制した格好だが、同時に、リンカーン委員長の法案を軌道修正しようとする試みとも考えられる。
金融規制をめぐる問題で大きな争点となっているのは、大手銀によるデリバティブ取引事業のスピンオフを義務付けるかどうか。長官は書簡で特にこの点に触れていないが、政府がデリバティブの取引規制強化につながると考える規定については具体的に述べており、民主党は、今回の書簡を受けて、リンカーン委員長の提案を一部削って規制強化を実現する方向に動く可能性がある。
関係筋によると、一部の民主党議員の間では、リンカーン委員長の提案があまりに過激なため、法案そのものの可決が危ぶまれるとの懸念が生じてた。
ジャド・グレッグ上院議員(共和、ニューハンプシャー州)は15日のインタビューで、リンカーン委員長の法案は、「デリバティブ問題に関して限りなく極左的」としている。
リンカーン委員長と同委共和党のサクスビー・シャンブリス上院議員(ジョージア州)は超党派の法案に向けて交渉してきたが、オバマ政権からのデリバティブ規制強化に向けた圧力によって数日前に交渉は決裂した。
関係筋によれば、リンカーン委員長は多くが予想していた金融業界寄りの法案でなく、それよりはるかに厳しい内容の法案を策定している。
デリバティブはこの10年で爆発的に人気が高まった複雑な金融取引で、企業にとって、国際商品価格や通貨、金利に対する実質上の保険を提供する。だが、投機目的にも使われ、銀行はデリバティブ取引やデリバティブを使った投機取引によって何十億ドルという利益を上げてきた。それが今回の規制強化の主因の1つとなっている。JPモルガンやゴールドマン・サックス・グループなど、米国の5大金融機関が昨年デリバティブ取引によって上げた利益は200億ドル(約1兆8400億円)を超える。
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