◇消費税上げ不可欠、受益の姿も示せ--森信茂樹氏・中央大法科大学院教授(租税法)
国内総生産(GDP)に対する債務残高の比率を見れば、主要先進国で日本の財政状況が最悪であるのは間違いない。ここ数年はっきりした問題は、国債のほぼ全額を国内で消化することはもはや難しく、海外の投資家に頼らざるを得なくなってきたことだ。
貯金で暮らす高齢者が増え、貯蓄率は低下した。輸出の伸び悩みで経常黒字も縮小し、国内の余剰資金は国債投資に回らなくなってきた。海外の投資家を引きつけるためには金利を上げて金融商品としての魅力を高める必要があるが、金利上昇は国債の利払い費の増加と、財政の硬直化を招いてしまう。
金利が上がれば景気回復の足かせとなる。日本経済にとり、巨額の財政赤字は最大の弱みだ。政府が財政再建への取り組みを緩めれば、市場で金利が跳ね上がる事態がいつ生じてもおかしくない。市場という「外圧」が働く前に、深刻な財政問題について政治は国民に警告を発するべきだ。
世界では、所得課税から消費課税に重点を移すのが大きな流れとなっている。日本の場合、少子高齢化で社会保障費がさらに膨らんでいくことを考えれば、消費税率の引き上げは不可欠だ。
増税を求める際に大切なのは、単に税率を示すのではなく、年金額や支給開始年齢、医療体制の強化など国民が受けるサービスの具体的な内容を併せて示すこと。受益と負担をパッケージで政策を打ち出し、国民の理解を得る努力が必要だ。
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